「共食」する環境の作り方

健康経営の施策に「共食」

健康経営の施策は経営者にとって悩みの種ですが、労働環境の改善やノー残業デーの設定、健康診断や運動指導の他にも食事があります。食事といってもバランスの良い食べ方だけでなく、みんなで一緒に共食する摂り方がポイントです。

 

共食は1人でご飯を食べる孤食の対になる言葉で、文字通り誰かと食を共にすることをいいます。家庭なら家族、学校なら友人や先生というように、会社は同僚や先輩、あるいは上司とご飯を食べるのが共食です。崇拝の対象に供物を供えて共に食べる意味もありますが、一般的には複数人で何かを食べることです。

 

みんなで一緒に共食するメリットには、会話が生まれてコミュニケーションを図れたり、食を話題に会話できる点が挙げられます。また、面白い話をすると笑顔になれますし、気持ちが明るくなってより美味しく食べられるようになります。同じ食べ物でも、やはり気持ち次第で美味しく感じられたり、逆に味が薄いと思ってしまうことがあります。

 

特に、落ち込んだり孤独感を覚えながら口にする食べ物は、機械的に口に運び軽く咀嚼をして飲み込むだけになりがちです。これでは楽しくありませんし、経営者の立場からすると、健康経営の施策の重要性が問われることになるでしょう。子供の場合は、1人で食べると好き嫌いが出てしまい、摂取する栄養に偏りが生じることが分かっています。大人も同様に、コンビニ弁当やカップ麺が多くなりがちで、それが栄養や健康に影響を与えます。直ぐに問題は生じないとしても、同じような食生活を続けていれば、やがて肉体や精神に悪影響を及ぼすはずです。

 

調理は確かに手間が掛かりますし、1人暮らしだと面倒になって簡単な方に流れやすい傾向です。職場という環境であれば、少なくとも孤食は避けられますし、食事内容の指摘ができるので偏食を改めさせることができます。しかし、従業員1人1人がバラバラで、実質的に孤食のような状態だと、誰かが指摘をしても根本的な改善には至らないでしょう。

 

「共食」する環境の作り方

そもそも、孤食は他人に対する関心を薄れさせますから、誰が何を食べようが関係ないという考えになります。人間関係が悪くなることがなければ良くもならない、そういう状況が健康経営の施策における改善点です。

 

みんなで一緒に共食しやすい環境の整備は、自然と人との関わりに興味を持ったり、一緒に何かを食べる喜びに気がつかせます。社員食堂は良い取り組みの1つで、栄養バランスを考慮した食事が提供できますし、従業員が摂取する栄養をコントロールしやすいことから、健康経営の施策に有効です。

 

人は誰もが誰とでも仲良くできるわけではなく、苦手意識が払拭できない相手というのは少なからずいるものです。中でも、押しが強い先輩や歳の離れている上司など、意見や価値観が合わないことはままあります。

 

ところが、何となく印象から苦手意識を感じているだけなら、会話をすることで違った一面に気がつける可能性が高まります。仕事中だと仕事の話しかできませんが、食事中は他の話もできますし、興味があることや趣味についても会話が可能です。つまり、みんなで一緒に共食する機会というのは、会話の幅を広げて相手のことをより知ったり、自分について知ってもらうチャンスになるわけです。ここで飲み会のようなノリが発生するのは困りますが、お昼の休憩や食事でこのような状況になる心配はまずないでしょう。

 

健康経営の施策の目的を掲げれば、従業員は納得して食堂に足を運びますし、試しにみんなで一緒に共食しようという気持ちになると思われます。経営者自身も参加することで、従業員の顔を覚えたり特徴が把握できるなど、今後の経営に役立つ情報が得られます。従業員の側からすれば、距離感のある経営者と近づけたり、人物像を知る機会になります。

 

ご飯を食べる行動というのは、年齢や性別に立場も関係なく、誰もが毎日必ず行うものです。だからこそみんなで一緒に共食する時間は平等ですし、更なる健康経営の施策に役立つヒントが生まれることもあります。

 

同じ場所で同じ共食をする状況は、仕事中とは微妙に関係性が変化して、自分の気持や相手に対する感覚も変わります。距離感も変化しますし、共通の話題が見つかり話に花が咲くこともあるので、共食はコミュニケーションの切っ掛けになることが大きいです。時間を決めて毎日共食する機会を設ければ、従業員はお昼の時間に合わせて、間食の頻度や量を減らすでしょう。

 

気分転換や糖分の補給は大切ですが、間食の摂り過ぎは健康を害しますから、経営者としては注意したいところです。ただ、指摘は受けた本人にとってフラストレーションになるので、さり気なく自然に間食を減らす傾向に導くのが理想的です。

 

共食はまさに健康的な食生活を促進する方法で、間食を減らし栄養バランスを改善する切っ掛けになります。ご飯の時は仕事の話をしない、代わりに自分のことを話したり楽しく会話をする、こういったルールを作るとより良い効果に期待できます。